ベトナム人技能実習生リンさんは無罪!
日本の外国人技能実習制度
外国人技能実習制度は、日本の技術や知識を開発途上国等の人に日本で習得してもらい、母国に帰ってから経済発展のために役立ててもらうための国際協力を目的とした制度です。しかし実際には、製造業や建設業、介護現場などの労働力不足を補うための労働者の受け入れ制度となっています。
外国人の技能実習生が母国の送出機関と、日本の監理団体を通じて日本の企業や個人事業主等の実習実施者と雇用関係を結び、監理団体が外国人技能実習機構に技能実習計画を提出し承認を受けた後に入国管理局に在留資格の申請を行い、在留許可を得て来日します。期間は最長5年とされています。
外国人の技能実習生が母国の送出機関と、日本の監理団体を通じて日本の企業や個人事業主等の実習実施者と雇用関係を結び、監理団体が外国人技能実習機構に技能実習計画を提出し承認を受けた後に入国管理局に在留資格の申請を行い、在留許可を得て来日します。期間は最長5年とされています。
現在の奴隷制度
技能実習生には職業選択や居住移転の自由、妊娠・出産の自由など人として保障されているはずの権利が認められていません。
現在日本は、40万人近くの技能実習生を受け入れており、その技能実習生の方々の労働によって、日本の多くの人々の暮らしが支えられています。しかし、技能実習制度は様々な問題を抱えています。その一つが多額の借金です。多くの技能実習生は、出国前に仲介業者やブローカー、送出機関などへ多額の借金をして来日しています。ベトナム人技能実習生の中には100万円以上の借金をして来日する方も少なくありません。しかし、技能実習生は、多くの場合最低賃金でしか賃金が支払われません。また、日本の労働関係の法律が適用されますが、残業代が支払われなないまま長時間労働をさせられたり、安全基準や衛生基準に満たない環境で労働させられたりする場合もあります。上司や同僚からのひどいパワハラやセクハラに悩んでいる実習生もいます。いくら労働条件に不満があっても技能実習制度では、倒産や解雇など特別な理由がなければ、実習生は仕事や住む場所を自由に変えることができません。また、監理団体や受入れ企業のなかには、実習生のパスポートや在留カードを取り上げたり、外部との自由な連絡を制限したりして、実習生の生活を不正に制限・管理するところもあります。このように技能実習制度には様々な問題点があり、2019年の1年間で途中帰国した実習生は約1万人、失踪者も約1万人に上ります。技能実習生は、労働者であり労働基本権はあるにも関わらず、労働基本権を主張し労使交渉をしようとすると帰国させられてしまうことが横行しています。このためこの制度は現代の奴隷制度と言われています。
技能実習生の多くが妊娠した場合に強制的に帰国させられてしまいます。
技能実習生も労働者として日本の法律で守られており、技能実習生が日本で妊娠出産をしても不利益な取り扱いをしてはならないと法律で定められています。また、技能実習生は技能実習計画を立て、それに沿って実習を実行することになっています。技能実習生が妊娠した場合には技能実習計画を変更し、可能な形で仕事を継続し、出産時には技能実習を一時中断し、出産後に実習を再開することが可能です。しかし、現実には技能実習に妊娠や出産されては困るとして、妊娠したら実習を終了させ帰国させることが横行しています。国から雇い主や監理団体に技能実習生が妊娠を理由に解雇を含む不利益な取り扱いをしてはならないと通知が3回も出た後も、雇用主や監理団体に妊娠を伝えると、子どものためにと帰国を促されたり、妊娠とは別の理由で帰国させられたりするケースもあります。また、中には、妊娠することは契約違反として賠償金を支払うよう求められる場合もあります。多額の借金をして来日している技能実習生にとって実習を辞めて帰国させられると残るのは多額の借金のみになってしまいます。このような現状の中で技能実習生は妊娠をしてもそれを周りに伝えることが難しいです。
技能実習生には、人として保障されているはずの職業選択や居住移転の自由、日本で妊娠や出産する自由が実質的に認められていません。アメリカ国務省も世界各国の人身売買に関する報告書の中で日本の外国人技能実習制度は人身売買にあたると指摘し、改善を促しています。
現在日本は、40万人近くの技能実習生を受け入れており、その技能実習生の方々の労働によって、日本の多くの人々の暮らしが支えられています。しかし、技能実習制度は様々な問題を抱えています。その一つが多額の借金です。多くの技能実習生は、出国前に仲介業者やブローカー、送出機関などへ多額の借金をして来日しています。ベトナム人技能実習生の中には100万円以上の借金をして来日する方も少なくありません。しかし、技能実習生は、多くの場合最低賃金でしか賃金が支払われません。また、日本の労働関係の法律が適用されますが、残業代が支払われなないまま長時間労働をさせられたり、安全基準や衛生基準に満たない環境で労働させられたりする場合もあります。上司や同僚からのひどいパワハラやセクハラに悩んでいる実習生もいます。いくら労働条件に不満があっても技能実習制度では、倒産や解雇など特別な理由がなければ、実習生は仕事や住む場所を自由に変えることができません。また、監理団体や受入れ企業のなかには、実習生のパスポートや在留カードを取り上げたり、外部との自由な連絡を制限したりして、実習生の生活を不正に制限・管理するところもあります。このように技能実習制度には様々な問題点があり、2019年の1年間で途中帰国した実習生は約1万人、失踪者も約1万人に上ります。技能実習生は、労働者であり労働基本権はあるにも関わらず、労働基本権を主張し労使交渉をしようとすると帰国させられてしまうことが横行しています。このためこの制度は現代の奴隷制度と言われています。
技能実習生の多くが妊娠した場合に強制的に帰国させられてしまいます。
技能実習生も労働者として日本の法律で守られており、技能実習生が日本で妊娠出産をしても不利益な取り扱いをしてはならないと法律で定められています。また、技能実習生は技能実習計画を立て、それに沿って実習を実行することになっています。技能実習生が妊娠した場合には技能実習計画を変更し、可能な形で仕事を継続し、出産時には技能実習を一時中断し、出産後に実習を再開することが可能です。しかし、現実には技能実習に妊娠や出産されては困るとして、妊娠したら実習を終了させ帰国させることが横行しています。国から雇い主や監理団体に技能実習生が妊娠を理由に解雇を含む不利益な取り扱いをしてはならないと通知が3回も出た後も、雇用主や監理団体に妊娠を伝えると、子どものためにと帰国を促されたり、妊娠とは別の理由で帰国させられたりするケースもあります。また、中には、妊娠することは契約違反として賠償金を支払うよう求められる場合もあります。多額の借金をして来日している技能実習生にとって実習を辞めて帰国させられると残るのは多額の借金のみになってしまいます。このような現状の中で技能実習生は妊娠をしてもそれを周りに伝えることが難しいです。
技能実習生には、人として保障されているはずの職業選択や居住移転の自由、日本で妊娠や出産する自由が実質的に認められていません。アメリカ国務省も世界各国の人身売買に関する報告書の中で日本の外国人技能実習制度は人身売買にあたると指摘し、改善を促しています。
ベトナム人技能実習生リンさんの事件
そんな中、2020年11月に熊本のミカン農家で働いていたベトナム人技能実習生のリンさんは妊娠し、誰にも言えない中で一軒家の寮で孤立出産をしました。死産でした。リンさんは死産直後の肉体的・精神的疲労の中、遺体をタオルで包み段ボール箱に入れ、子どもの名前を考え、弔いのメッセージを手紙にして箱の中に同封し、自室内の棚に置き一晩過ごしました。
この死産当日の行為が、埋葬義務に違反しているとしてリンさんは逮捕され第一審と第二審で有罪となりました。誰にも助けを借りずに独りで死産をして、その直後33時間程を遺体を自宅に安置することは犯罪なのでしょうか?この事件は外国人技能実習生だけではなく、日本に住む女性にとってとても深刻な問題でした。なので、多くの人がリンさんは無罪だと声を上げてくれました。
そして、2020年11月19日のリンさんの逮捕後から最高裁での判決まで約2年4か月かかりましたが、2023年3月24日にリンさんは無罪を勝ち取ることができました。今回無罪判決がでたことで、孤立出産に追い込まれる女性たちが犯罪者として扱われるのではなく、擁護と支援が必要な人として扱われ、適切なケアが受けれるような体制が整っていくのではと期待しています。これまで本当にたくさんの方が応援や協力してくださったからこそリンさんの無罪が勝ち取れたと思います。 心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。
この死産当日の行為が、埋葬義務に違反しているとしてリンさんは逮捕され第一審と第二審で有罪となりました。誰にも助けを借りずに独りで死産をして、その直後33時間程を遺体を自宅に安置することは犯罪なのでしょうか?この事件は外国人技能実習生だけではなく、日本に住む女性にとってとても深刻な問題でした。なので、多くの人がリンさんは無罪だと声を上げてくれました。
そして、2020年11月19日のリンさんの逮捕後から最高裁での判決まで約2年4か月かかりましたが、2023年3月24日にリンさんは無罪を勝ち取ることができました。今回無罪判決がでたことで、孤立出産に追い込まれる女性たちが犯罪者として扱われるのではなく、擁護と支援が必要な人として扱われ、適切なケアが受けれるような体制が整っていくのではと期待しています。これまで本当にたくさんの方が応援や協力してくださったからこそリンさんの無罪が勝ち取れたと思います。 心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。
事件の経緯
2018年8月:150万円借金をして来日
リンさんは、父親が病で働けないため、一人で家計を支える母を助けようと、技能実習生1号ロとして19歳の時に来日し、熊本県内のみかん農家で働き始めました。ベトナムの平均年収が30万円程の中、リンさんは送出機関に150万円借金をして来日したため、ほとんど休みなく働き毎月の給料の中から借金を返済していました。
2020年5月:妊娠に気づいたが誰にも相談できず
リンさんは妊娠に気が付きました。妊娠して強制帰国させられるケースが相次ぐ中、監理組合から「妊娠などしないように」と言われており、リンさんも帰国させられることが怖くて誰にも相談できませんでした。働ける限り働いてから帰国し、出産して育てようと考えていました。
2020年11月15日:双子の赤ちゃんを死産し一晩共に過ごす
11月14日の夜、リンさんは激しい腹痛に襲われ、胎児が動かなくなりました。一晩中痛みと出血、孤独と恐怖にさいなまれながら、15日の午前9時ころに双子の赤ちゃんを出産しました。赤ちゃんは泣きもせず、呼吸もしておらず、触っても反応しませんでした。死産でした。動かない赤ちゃんを見てリンさんの心はとても痛みました。体調が悪く血まみれの布団で子ども達の隣に横になりましたが、裸姿の子どもたちがかわいそうだったので、子ども達が寒くないようにタオルでくるみ、段ボール箱を棺がわりに遺体をいれました。また、子ども達に名前をつけて「ごめんね、私の双子の赤ちゃん!!早く安らかなところに入れますように」と書いた手紙を箱の中にそえて、箱を自室の棚の一番上に置きました。
2020年11月16日:病院に連れていかれ死産を告白
11月16日午前10時頃に雇い主から声を掛けられ、監理団体に連れられてリンさんは病院に連れていかれました。診察と検査を受ける中で出産したことが発覚します。リンさんは医師、看護師、監理団体、通訳に囲まれ出産について問いただされて、恐怖とパニックで当初は本当のことを伝えることができませんでした。そこにはリンさんを慰めたり助けてくれる人は一人もいませんでした。しかし、医師から警察に通報すると言われて死産したことを認めました。
2020年11月19日:退院と同時に逮捕その後死体遺棄罪で起訴
リンさんは退院と同時に逮捕され八代警察署に連れていかれ取り調べを受けます。その後熊本市内の東警察署へ移送され、勾留され、取り調べを受けます。熊本地検は12月10日にリンさんを刑法第190条の死体遺棄罪で起訴しました。
2021年7月20日:「懲役8か月、執行猶予3年」の有罪判決
2021年6月21日に第一回公判、7月13日に第2回公判は開かれました。そして2021年7月20日に熊本地方裁判所は、リンさんの行為が「正常な埋葬」のための準備行為でなく、葬祭する義務を怠って遺体を放置したことにより、国民の一般的な宗教的感情を害したものであるから死体遺棄罪が成立するとして、リンさんに「懲役8月、執行猶予3年」の有罪判決を言い渡しました。
2021年7月27日:福岡高等裁判所へ控訴
リンさんは第一審の判決に納得がいきませんでした。出産から翌日に死産を告白するまでに約33時間しか経っておらず、リンさんは病院に連れて行かれるまで子ども達とずっと一緒にいたので、リンさんは遺体を「放置」していません。なので福岡高等裁判所へ控訴しました。
2022年1月19日:福岡高裁で「懲役3か月、執行猶予2年」の有罪判決
福岡高裁はリンさんが遺体を「放置」していないことを認めて第一審の判決を破棄しました。しかし、子ども達が寒くないようにと、リンさんが子ども達の遺体が入った箱をひとまわり大きい箱に入れ、テープ留めをした行為が「隠匿」(死体を隠す行為)にあたるとして、「懲役3月、執行猶予2年」の有罪判決を出しました。
2022年1月31日:最高裁判所へ上告
リンさんと弁護団は2022年1月31日に最高裁判所に上告しました。そして、4月11日に127人分の意見書をつけた上告趣意書と無罪判決を求める25,912名分の署名(累計86,612名分)を弁護団が最高裁判所へ提出しました。
2023年3月24日 無罪判決
2023年3月24日に最高裁判所は、リンさんの行為は「他者が死体を発見することが困難な状況を作出した」けれども「習俗上の埋葬等と相いれない処置とは認められない」ので「遺棄」には当たらないとして逆転勝訴判決を裁判官4名の全員一致で言い渡しました。
リンさんは、父親が病で働けないため、一人で家計を支える母を助けようと、技能実習生1号ロとして19歳の時に来日し、熊本県内のみかん農家で働き始めました。ベトナムの平均年収が30万円程の中、リンさんは送出機関に150万円借金をして来日したため、ほとんど休みなく働き毎月の給料の中から借金を返済していました。
2020年5月:妊娠に気づいたが誰にも相談できず
リンさんは妊娠に気が付きました。妊娠して強制帰国させられるケースが相次ぐ中、監理組合から「妊娠などしないように」と言われており、リンさんも帰国させられることが怖くて誰にも相談できませんでした。働ける限り働いてから帰国し、出産して育てようと考えていました。
2020年11月15日:双子の赤ちゃんを死産し一晩共に過ごす
11月14日の夜、リンさんは激しい腹痛に襲われ、胎児が動かなくなりました。一晩中痛みと出血、孤独と恐怖にさいなまれながら、15日の午前9時ころに双子の赤ちゃんを出産しました。赤ちゃんは泣きもせず、呼吸もしておらず、触っても反応しませんでした。死産でした。動かない赤ちゃんを見てリンさんの心はとても痛みました。体調が悪く血まみれの布団で子ども達の隣に横になりましたが、裸姿の子どもたちがかわいそうだったので、子ども達が寒くないようにタオルでくるみ、段ボール箱を棺がわりに遺体をいれました。また、子ども達に名前をつけて「ごめんね、私の双子の赤ちゃん!!早く安らかなところに入れますように」と書いた手紙を箱の中にそえて、箱を自室の棚の一番上に置きました。
2020年11月16日:病院に連れていかれ死産を告白
11月16日午前10時頃に雇い主から声を掛けられ、監理団体に連れられてリンさんは病院に連れていかれました。診察と検査を受ける中で出産したことが発覚します。リンさんは医師、看護師、監理団体、通訳に囲まれ出産について問いただされて、恐怖とパニックで当初は本当のことを伝えることができませんでした。そこにはリンさんを慰めたり助けてくれる人は一人もいませんでした。しかし、医師から警察に通報すると言われて死産したことを認めました。
2020年11月19日:退院と同時に逮捕その後死体遺棄罪で起訴
リンさんは退院と同時に逮捕され八代警察署に連れていかれ取り調べを受けます。その後熊本市内の東警察署へ移送され、勾留され、取り調べを受けます。熊本地検は12月10日にリンさんを刑法第190条の死体遺棄罪で起訴しました。
2021年7月20日:「懲役8か月、執行猶予3年」の有罪判決
2021年6月21日に第一回公判、7月13日に第2回公判は開かれました。そして2021年7月20日に熊本地方裁判所は、リンさんの行為が「正常な埋葬」のための準備行為でなく、葬祭する義務を怠って遺体を放置したことにより、国民の一般的な宗教的感情を害したものであるから死体遺棄罪が成立するとして、リンさんに「懲役8月、執行猶予3年」の有罪判決を言い渡しました。
2021年7月27日:福岡高等裁判所へ控訴
リンさんは第一審の判決に納得がいきませんでした。出産から翌日に死産を告白するまでに約33時間しか経っておらず、リンさんは病院に連れて行かれるまで子ども達とずっと一緒にいたので、リンさんは遺体を「放置」していません。なので福岡高等裁判所へ控訴しました。
2022年1月19日:福岡高裁で「懲役3か月、執行猶予2年」の有罪判決
福岡高裁はリンさんが遺体を「放置」していないことを認めて第一審の判決を破棄しました。しかし、子ども達が寒くないようにと、リンさんが子ども達の遺体が入った箱をひとまわり大きい箱に入れ、テープ留めをした行為が「隠匿」(死体を隠す行為)にあたるとして、「懲役3月、執行猶予2年」の有罪判決を出しました。
2022年1月31日:最高裁判所へ上告
リンさんと弁護団は2022年1月31日に最高裁判所に上告しました。そして、4月11日に127人分の意見書をつけた上告趣意書と無罪判決を求める25,912名分の署名(累計86,612名分)を弁護団が最高裁判所へ提出しました。
2023年3月24日 無罪判決
2023年3月24日に最高裁判所は、リンさんの行為は「他者が死体を発見することが困難な状況を作出した」けれども「習俗上の埋葬等と相いれない処置とは認められない」ので「遺棄」には当たらないとして逆転勝訴判決を裁判官4名の全員一致で言い渡しました。
2023年4月29日
コムスタカー外国人と共に生きる会
事務局 佐久間より子
コムスタカー外国人と共に生きる会
事務局 佐久間より子